「シッコ」を観たのだ。


「シッコ」(SICKO)
 2007年 アメリ
 監督・製作・脚本・出演:マイケル・ムーア


 ☆☆☆☆


「ボーリングフォーコロンバイン」、「華氏911」と観てきて、オレ様は今作が一番良かったと思う。
「ボーリングフォーコロンバイン」もけっこう良かったが、「華氏911」までいくと、あまりにブッシュへの個人攻撃が執拗で、ちょっとうんざりした。
ドキュメンタリーだからといって必ずしも素材を公平に扱う必要はないとは思うけど、やりすぎると逆に説得力がなくなるんではないかと思った。
実は今作でもブッシュは登場するのだが、同時にヒラリー・クリントンも槍玉に挙げられているので、一方的な共和党叩きにはなっていない。


ムーア氏の今回の標的はアメリカの医療保険制度。
アメリカは先進国で唯一、国民皆保険制度を持たない国なのである。
そのために最下層の人たちは保険に入れない=怪我をしたり病気になっても医者に行けない。
事故で中指と薬指を切断してしまい、医者に行ったらそれぞれの指をつなげる料金を示され、両方は払えないから薬指だけにした人の話がでてくる。
運よく保険に入れた人も安心はできない。
いざ病気をして保険を使おうとしたら、何だかんだと難癖をつけてなかなか保険がおりないようになっているのである。


アメリカと比較して、カナダ、イギリス、フランス、キューバ医療保険制度が紹介される。
ここでのポイントは、これらの国の制度の良い点だけを紹介していることだ。
実際はそれぞれの国にも色々な問題があるはずなのだが、その点は全てカットしてアメリカとの違いを強調している。
この映画の中のフランスなんて、夢のような素晴らしい国にしか見えないもんね。
ドキュメンタリーとして、たぶんこの点を批判する人は多いと思う。
でもこの映画はあくまでアメリカの医療制度を批判するのがテーマだから、わかり易くていいんじゃないだろうか。


マイケル・ムーアの面目躍如なのが最後のシーン。
911の時に救命活動に従事しその際に、粉塵を吸ったり、精神的なトラウマなどで後遺症に苦しむ元消防隊員たちが登場する。
彼らは国家の英雄のはずなのに、アメリカの医療制度のために十分な治療が受けられずにいる。
そんな彼らをムーア氏は治療を受けさせるためにキューバに連れて行く。
そのうちの一人が、キューバの治療費が無料であることを知り、思わず感動して涙してしまう。
我々からみると感動的な場面であると同時に、滑稽な場面でもある。
敵国であり、自分たちより貧しいはずのキューバの方が優れた医療制度があることに、これを観た大概のアメリカ人は驚くのではないだろうか?


マイケル・ムーアの真摯な行動力に支えられたブラックな笑いは天下一品だね!




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