「英国王のスピーチ」

吃音のためにスピーチが苦手なのに、意志に反して国王となってしまったジョージ6世が、言語聴覚士の型破りなトレーニングによって、第2次大戦開戦時に国民を鼓舞する歴史的なスピーチをするに至る過程を描いた作品。


予告編を観ただけでほぼストーリーがわかってしまうほど至極単純な筋書きなのだが、だからといって鑑賞中一度も退屈することはなかった。


なぜそうなのかというと、ディテールが非常によくできているからだと思う。
例えば、国王である父親が亡くなったあと、言語聴覚士ライオネルの自宅をフラリと訪れたジョージ6世。
それまではいくら治療に必要だと言われても、頑なに幼少時のことを話したがらなかった彼が、「子供の頃、プラモデルを作らせてもらえなかったんだよなあ」とつぶやき、ライオネルの息子が作りかけたプラモデルをいじりながら、子供時代のことをポツリポツリと語り始める。
強圧的だった父親のこと、乳母に虐待されていたことなど。
これがなんともいえず良いシーンなんだよなあ。
最初は国王たる自分に対して、対等な立場を求めてくるライオネルを苦々しく感じていたジョージ6世がついに心を開いた瞬間であり、吃音の治療が進むきっかけともなる重要な場面なのである。


言語聴覚士ライオネルについても完璧な人物としては描かず、役者を目指しながら夢をかなえることができず、挫折感を味わいながら生きてきたことを匂わせている。


また、飄々としながらも、優しくジョージ6世を見守る皇后も良かった。
友情・努力・愛の力で、自らの悩みを克服し、人々に感動を与えるストーリーは、いわゆるスポ根ドラマの王道ですな。
良い意味で万人ウケする作品だと思う。


アカデミー賞で4冠とったのも納得の星4つ!☆☆☆☆