太陽
ロシアの名匠アレクサンドル・ソクーロフが、
”現人神”という立場を捨てて人間宣言するまでの昭和天皇の苦悩を描いた作品。
扱う題材が題材だけに、日本ではお蔵入りかと云われていた。
これを配給した会社も勇気があるが、
ふたを開けたら単館上映としては大ヒットしてしまったのだった。
日本人ではないから撮れたのだろうが、
タブー視されている人物を深いところまで描きだしているのだからスゴイ。
イッセー尾形が演じる昭和天皇は細かい癖までよく研究されていて、
リアリティがあり、生き生きと描かれている。
政治とは無縁で、学者肌で無垢な、一人の”人間”ヒロヒトを愛おしいと感じるほどである。
侍従役の佐野史郎や、
出番は少なかったが皇后役の桃井かおりとのやりとりもなかなか絶妙。
昭和天皇の有名な口癖、「あ、そう」も、
シチュエーションによっていろんなバリエーションがあったのだなあ、という事がわかる。
それは単に”理解した”という意味だけにとどまらず、
時には相手をはぐらかすためだったり、諦念からくる言葉だったりもする。
映画を観たあとで調べたら、当時の侍従の証言によると、
実際に昭和天皇の発する「あ、そう」は何種類かあり、
その時々で使い分けていたそうである。
こんな日本人的で微妙な空気感もよく描けていて、
このロシア人監督は本当によく研究していると思う。
自分の思想を自由に発言することができない”現人神”という立場と
生身の人間としての自覚の間で揺れ動く昭和天皇の悲しみを、
コミカルな部分も交えながら、
且つとても美しい映像で、まとめあげた秀作なのだった。
構成 ☆☆☆
美しさ ☆☆☆☆
知性 ☆☆☆☆
スッキリ度 ☆
バカ度 ☆☆
セクシー度 (なし) (5点満点)
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