「エレクション」を観たのだ
香港の鬼才、ジョニー・トー監督お得意のノワール物である。
原題はそのものズバリ、「黒社会」だ。
構成員5万人といわれる香港最大の組織で、2年に一度の会長を選ぶ選挙が行なわれる。
候補者は二人。
一人は冷静で計算高い男で、もう一人は短気で派手好きな男だ。
この二人の会長の座をめぐる争いがストーリーの主軸となり、その周りでうごめく個性的な男たちが描かれている。
とにかく男クサーイ作品。
ストーリーだけ聞くとありきたりのヤクザ映画なのだが、そこはジョニー・トー。
ストイックな演出が冴え渡る。
何がストイックかというと、闘いのシーンはたくさんでてくるのだが、はじめから最後までいっさい銃が登場しないのだ。
銃であっさり人が死ぬシーンがないことによって、人間同士の息遣いが伝わり、かえってリアリティを感じるのである。
人が死ぬシーンではなぜかやたら明るいノリの曲や、女性ボーカルのやさしい曲がバックに流れていて、違和感をかもし出している。
これが深作欣二の「仁義なき戦い」であれば、例の有名なテーマ曲が大げさに流れるところだ。
トー監督って、たまにこういう不思議な感覚を見せることがあり、好き嫌いが分かれるところかもしれない。
出てくる役者はおなじみのトー組の面々。
はっきりいって、イケメンや美女はあまり登場しないが、それぞれがイイ味だしてるんだよね。
あと、この映画で初めて知った香港の裏社会のこと。
その歴史は17世紀にまで遡るそうだ。
満州族の清王朝支配を打倒し、漢民族王朝を復活させるために発足した秘密結社が、時代を経て本来の志が失われ、ヤクザ組織に変化していったらしい。
その名残りともいえる誓いの儀式が劇中でも描かれている。
1960年代の香港では6人に1人がこの組織と何らかの関わりを持っていて、居住民の大多数が潜在的構成員であるとされていたんだそうだ。
オレ様が子供の頃持っていた、怖いイメージの香港はあながち間違いではなかったわけだ。
昔、「Gメン75」の香港編を観て、あんな怖いところには一生行きたくない。と思ったものだ。
☆☆☆☆☆
ジョニー・トー作品をまだご覧になったことがない方には、下の2作品をオススメします。
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