「墨攻」を観たのだ。


日本のコミックが原作で、春秋戦国時代の中国が舞台の作品。


諸子百家のうち、墨家という集団がいた。
彼らは他者を等しく愛せよという「兼愛」と、侵略と併合は人類の犯罪とする「非攻」を思想とし、当時は儒家と並ぶほどの思想集団だったらしい。


大国・趙の攻撃によって落城寸前の小国・梁を、たった一人で守るために墨家からやってきた天才戦術家・革離が主人公。
この革離は、原作ではハゲでちんちくりんのおっさんなのだが、映画ではアンディ・ラウが演じているのでずいぶんとイメージは違う。


ジェイコブ・チャン監督は作品のテーマについて「戦争に英雄はいらない」ということを語っているが、その言葉どおり、物語のラストで、革離もライバルの巷淹中将軍も所詮は権力者のコマでしかないことが描かれている。
悲しい結末の映画だが、これは戦争の現実だから仕方がない。


原作は全く色気がない硬派な作品なのだが、映画版は制作側の要請があったのかもしれないが、漫画版には出てこない女剣士が登場し、革離とのちょっとしたロマンスも描かれている。
オレ様はそれはそれでアリだと思う。
だけど、ちょっと描き方が中途半端だったと思う。
まあ、映画だからキレイどころの一人も一応出しとかなきゃな、ぐらいな感じがした。
せっかくこういうキャラを登場させたのなら、もっとロマンスの部分を徹底的に描いて、この救いがない物語に一筋の光明をもたらせた方が、原作とは違う作品として面白くなったのではないだろうか。



☆☆☆



墨攻 (1) (小学館文庫)

墨攻 (1) (小学館文庫)